風来坊

小説


かもめのジョナサン/リチャード・バック ★★★★★

”孤高”というものについて考えさせられる作品。結局群れたがる凡人たちは新しい価値を創
造することはできないことがわかる。



69/村上龍 ★★★★★

このあたりが村上龍の原点と思われる。青春のバカバカしさと純粋さをストレートに描いた一大
傑作青春小説。おもいっきり笑いたい人におすすめ。但し、満員電車の中や授業中に読むの
はやめておいたほうがいい。突然爆笑して周囲の顰蹙を買うことになるかもしれない。



アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス ★★★★

白痴の青年が手術によって天才となるが、自分の受けた手術を研究し、自分が元に戻ってしまうことを知る。そして徐々に自分の知力が衰えていくことを感じながらも、必死に自分自身と戦う。
”学ぶ”ということがどういうことか、考えさせられる。



1984/ジョージ・オーウェル ★★★★

権力による支配や暴力の恐ろしさを徹底的に描いた作品。



デミアン/H.ヘッセ/新潮文庫 ★★★★★

人生、愛、人間を深く洞察した作品。ここには人生のたくさんの”知恵”が含まれている。




ノーライフキング/いとうせいこう ★

なにか得体の知れない凄いことがあると匂わせておきながら、単なる虚仮威しにおわっている。



不夜城/馳星周 ★★★★★

日本のハードボイルドの中では傑出している。リアリティーとスピード感があり読者を引き込ん
で、一気に読ませてしまう。日本的ウェット感がなく、砂漠のようにドライである。



コインロッカー・ベイビーズ/村上龍 ★★★★

キャンバスに絵の具を塗ったくったような、荒々しい躍動感が心地よい。



姑穫鳥の夏/京極夏彦 ★★★★

構成がしっかりしていて読みやすい。多少ご都合主義の嫌いはあるが、あまりそれを感じさせず
楽しませてくれる。




人間失格/太宰治 ★★★★

中学生の時”走れメロス”を読んで以来、うさん臭い奴だという印象があって、避けていたのだ
が、此の本を読んで私に近いものを感じた。破滅の美学。



リング/鈴木光司 ★★★★

読み出したら止まらないノンストップホラー小説。唯、結末はちょっと納得できない。



らせん/鈴木光司 ★★

ストーリーが自家撞着に陥っているように思われる。結末も凡庸である。



■ピアニシモ/辻仁成 ★★★☆


期待しないで読んだら結構面白かった。



■あたしが海に還るまで。/内田春菊 ★★★☆


徹底した自堕落振りと、自分の身の上に起る出来事に対する徹底したニヒリズムが背筋を凍
らせる。



その女アレックス/ピエール・ルメートル/文春文庫 ★★★☆

刑事サスペンスもの。この手のものは、もはやストーリーもネタも出尽くしている
から、もはやこういう方向に行くしかないのだろうがグロい。
情景描写、心理描写が緻密である分このグロテスクであり、
もの悲しい物語に、リアリティを与えている。



キッチン/吉本ばなな ★★★☆

ストーリーを楽しむ小説ではなく、起こった出来事のによる登場人物たちの心の
変遷を独特の繊細で淡い表現で描写する。風景画を鑑賞するように雰囲気を
味わう小説である。



■ 夏と花火と私の死体/乙一/集英社文庫 ★★★

よくある怖い話をそのまま小説にしたような感じ。



■ バトル・ロワイアル/高見広春 ★★★☆

大東亜共和国という架空の国家で、政府が毎年全国中学の50学級を選んで、それぞれ離島に閉じ込め殺し合いさせるという、
近未来というか 平行世界のSF。言わば、日本版「1984」と言ったところか。ストーリーが荒唐無稽であるにも拘わらず、
読者を物語の世界に引き込む筆力はさすがである。本家はより心理的、精神的恐怖が主体の描写であったが
本作は、より即物的である。ストーリー上、殺戮場面が数多く出て来るが、恐らく著者は、殺人事件や戦場の記録を丹念に
調べたのであろう。これがやたらとリアルで若干グロさがある。かなりデフォルメされているが、
現代の日本社会に対する批判にもとれる。
「1984」は絶望的な結末だったが、「バトル・ロワイアル」は微かな希望のある終わり方で、そこがせめてもの救いか。



■ 極大射程/スティーヴン・ハンター ★★★☆

サスペンス、アクション、ヴァイオレンス。罠に嵌められた凄腕スナイパーの運命や如何に。
よく出来たエンターテイメント小説。



■ 月光/誉田哲也 ★★★

サスペンス物。作者は多分プロットを始めに作って、それに沿って物語を書いたのだろうが、話の展開が不自然というか雑。
小説だから多少のご都合主義は仕方ないが、それでも読者にそれを感じさせない技術は必要であろう。また登場人物(特に涼子)
のキャラ設定と行動があまりにも乖離しすぎていて、リアリティが感じられない。
特に涼子の死が核となって物語が進んでいくのだが、その一番重要な部分があまりにもお粗末。
本屋に行くとこの作者の作品が、平積みで並んでいるから多分売れっ子なんだろう。
締め切りが迫っていて適当に処理したのか、編集者にせっつかれたのか知らないが、今後この作者の作品を読むことはないだろう。