風来坊

小説2



■ ダイナー/平山夢明 ★★★☆


作者の妄想が暴走したかのような作品。ヴァイオレンスとグロのオンパレード。
なにかカルト映画を見ているかのような感覚になる。ストーリーはあってないようなもの。
しかし、不思議と読後感は悪くない。



■ リアル鬼ごっこ/山田悠介 ★★

RPGをそのまま小説にしたような作品。リアリティに乏しく、突っ込みどころ満載の、まあいわゆるライトノベルという類いの物。
文章の上手い高校生が書いたような小説。



■ 煙か土か食い物/舞城王太郎 ★★★

ミステリー&ヴァイオレンス。文章表現、ストーリー展開ともに粗いが、それは著者が意図的にやっているようである。その粗さである種のリズムを生み出して
読者を引き込もうとしているようだが、若干空回りしている。



 僕って何/三田誠広 ★★★

1970年代の学生運動末期の田舎から出てきた学生の東京でのキャンパスライフを描いた作品。とは言え、社会問題や青春時代の若者のアイデンティティに関する苦悩などといった問題に
切り込むことはなく、専ら彼女とうまく行くにはどうすればいいんだという、まさに個人的な「傘がない」の世界。社会問題や人間の本質に迫る問題を正面からとらえるのはカッコワルイという、
軽薄短小シラケ世代を反映する作品。



■ 君よ憤怒の河を渉れ/西村寿行 ★★★☆

西村寿行というと、エログロで猟奇的な作品ばかり書いているのかと思いきや、これはいたって本格的刑事サスペンスもの。
若干のプロットの甘さ、ご都合主義はご愛敬といったところか。



■ オールド・テロリスト/村上龍 ★★★☆

よくできたエンターテイメント小説であろう。ただテロリストたちの動機がいまいち不明である。何故一般人を犠牲にしてまで
テロを行うのかという、必然性が読者に伝わってこず、ある種読者が置いてきぼりになってしまっている。
また、登場人物カツラギの人物設定も曖昧というか、故意に曖昧にして、話をうまく展開するために、都合よく使っている印象がある。
いずれにせよ、この作品は読者にカタルシスを与えるというより、作者自身がカタルシスを得るために書かれた作品という感じである。





■ 坂の上の雲/司馬遼太郎 ★★★★

     日露戦争を題材にした歴史小説。史実を基にしているが、戦記物と違い、秋山好古、真之兄弟を一つの軸として物語を展開している。
     文庫本にして八巻という大部であり、下調べに5年を費やしたということだが、新聞連載ということもあり、描写のち密さ、重厚さが足りず、
     大衆小説になっている。しかし、それらの欠点を補って余りあるほど、日露戦争の全体像はよくとらえられており、素晴らしい作品と言える。



■ マネーロンダリング/橘玲 ★★★★

     クライム・サスペンス小説。40過ぎての遅咲きのデビューであるが、緻密な構成、精密な描写力で、読者を物語の中へ引きずり込む。
     全編に漂う、筆者の社会や人生に対するクールなニヒリズムが心地よい。